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大阪地方裁判所 昭和42年(わ)2680号 判決 1976年11月26日

主文

被告人久保亀蔵を懲役八月に、被告人高橋友三郎を懲役四月に、被告人東野喜一を懲役一〇月に、被告人乾多市、同下浦景雄、同井戸正昭、同野林実義、同佐茂光義、同向井一郎をそれぞれ懲役三月に各処する。

この裁判確定の日から被告人らに対しいずれも三年間それぞれその刑の執行を猶予する。

訴訟費用中、証人上田新太郎、同舛見義一に関する分は被告人久保亀蔵の、証人井本伊三郎、同上西倉司に関する分は被告人東野喜一の各負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人らは、いずれも昭和四二年四月一五日施行の大阪府議会議員選挙に際し、かねてから大阪府豊能郡・箕面市から立候補する決意を有し、同年三月三一日にその立候補の届出をした石伏義雄の選挙運動者であるが、

第一、被告人久保亀蔵は、

一、同年三月一八日ころ、大阪府豊能郡東能勢村大字余野九〇五番地東能勢村役場において、室木広治から、右石伏義雄のため投票取〓め等の選挙運動を依頼され、その報酬及び費用として供与されるものであることを知りながら、現金一五万円の供与を受け、

二、未だ立候補届出がないのに、

1、前記石伏に当選を得しめる目的をもつて、同年三月二二日ころ、前記東能勢村役場において、右石伏のため投票取〓め等の選挙運動を依頼し、その報酬及び費用として、

(一) 被告人高橋友三郎に対し現金一万円を、

(二) 被告人乾多市に対し現金一万円を、

(三) 長沢源蔵に対し現金一万円を、

(四) 舛見義一に対し現金一万円を、

(五) 被告人下浦景雄に対し現金一万円を、

(六) 被告人井戸正明に対し現金一万円を、

それぞれ供与し、

2、前記第一、二、1記載の日時場所において、被告人高橋友三郎に対し、被告人野林実義、同佐茂光義及び同東野喜一が前記石伏のため投票取〓め等の選挙運動をすることの報酬及び費用として、同人らに各一万円宛供与されたい旨を依頼し、その資金として、現金三万円を交付し、

3、前記石伏に当選を得しめる目的で、同年三月二九日ころ、同郡同村大字余野五三番地の一石伏義雄方において、被告人東野喜一に対し、前記第一、二、1記載と同趣旨のもとに、石伏好子を介して現金六万円を供与し、

もつて、それぞれ立候補届出前の選挙運動をし、

第二、被告人高橋友三郎は、

一、前記第一、二、1記載の日時場所において、被告人久保亀蔵から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、現金一万円の供与を受け、

二、未だ立候補届出がないのに、前記石伏に当選を得しめる目的をもつて、前記第一、二、2記載の日時場所において、前記第一、二、1記載と同趣旨のもとに、

(一) 被告人野林実義に対し現金一万円を、

(二) 被告人佐茂光義に対し現金一万円を、

(三) 被告人東野喜一に対し現金一万円を

各供与し、もつて、それぞれ立候補届前の選挙運動をし、

第三、被告人東野喜一は、

一、1、前記第二、二記載の日時場所において、被告人高橋友三郎から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、現金一万円の供与を受け、

2、前記第一、二、3記載の日時場所において、被告人久保亀蔵から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、石伏好子を介して現金六万円の供与を受け、

3、同年四月初めころ、前記石伏義雄方において、同人から、室木広治その他の選挙運動者に同候補者のために投票取〓め等の選挙運動をすることの報酬及び費用として供与されたい旨依頼され、その資金として交付されるものであることを知りながら、現金二〇万円の交付を受け、

4、同年四月二日ころ、前記石伏義雄方において、室木広治から、前記第一、一記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、現金二〇万円の供与を受け

5、同年四月四日ころ、同郡同村大字余野九〇五番地東能勢村農業協同組合において、室木広治から、前記第一、一記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、井本伊三郎を介して現金一五万円の供与を受け、

6、同年四月一八日ころ、前記石伏義雄方において、同人から、被告人東野が同候補者のため投票取〓め等の選挙運動をしたことに対する報酬とする目的をもつて供与されるものであることを知りながら、現金三五万円の供与を受け、

二、同候補者に当選を得しめる目的をもつて、同年四月二日ころ、前記石伏義雄方において、被告人向井一郎に対し、前記第一、二、1記載と同趣旨のもとに、現金一万円を供与し、

第四、被告人乾多市、同下浦景雄及び同井戸正昭は、いずれも前記第一、二、1記載の日時場所において、被告人久保亀蔵から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、各現金一万円の供与を受け、

第五、被告人野林実義及び同佐茂光義は、いずれも前記第二、二記載の日時場所において、被告人高橋友三郎から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、各現金一万円の供与を受け、

第六、被告人向井一郎は、前記第三、二記載の日時場所において、被告人東野喜一から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、現金一万円の供与を受けたものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

一、被告人久保亀蔵の判示第一の一の所為は公職選挙法第二二一条第一項第四号に、判示第一の二の1、3の各所為のうち供与の点はいずれも同法第二二一条第一項第一号に、事前運動の点はいずれも同法第二三九条第一号、第一二九条に、判示第一の二の2の行為のうち交付の点は同法第二二一条第一項第五号に、事前運動の点は同法第二三九条第一号、第一二九条にそれぞれ該当するが、判示第一の二の1、3の各供与と各事前運動ならびに判示第一の二の2の交付と事前運動はいずれも一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五四条第一項前段、第一〇条によりいずれも一罪として重い供与罪もしくは交付罪の刑で処断することとし、以上各罪につきいずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は同法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により最も犯情の重い判示第一の一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で右被告人を懲役八月に処し、情状により同法第二五条第一項を適用して、同被告人に対しこの裁判の確定した日から三年間右の刑の執行を猶予し、訴訟費用中、証人上田新太郎、同舛見義一に支給した分については、刑事訴訟法第一八一条第一項本文を適用してこれを右被告人に負担させることとする。

二、被告人高橋友三郎の判示第二の一の所為は公職選挙法第二二一条第一項第四号に、判示第二の二の所為のうち供与の点は同法第二二一条第一項第一号に、事前運動の点は同法第二三九条第一号、第一二九条にそれぞれ該当するが、判示第二の二の供与と事前運動は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五四条第一項前段、第一〇条により一罪として重い供与罪の刑で処断することとし、以上各罪につきいずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は同法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第二の二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で右被告人を懲役四月に処し、情状により同法第二五条第一項を適用して、同被告人に対しこの裁判の確定した日から三年間右の刑の執行を猶予することとする。

三、被告人東野喜一の判示第三の一の1、2、4ないし6の各所為はいずれも公職選挙法第二二一条第一項第四号に、判示第三の一の3の所為は同法第二二一条第一項第五号に、判示第三の二の所為は同法第二二一条第一項第一号にそれぞれ該当するので、以上各罪につきいずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により最も犯情の重い判示第三の一の6の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で右被告人を懲役一〇月に処し、情状により同法第二五条第一項を適用して、同被告人に対しこの裁判の確定した日から三年間右の刑の執行を猶予し、訴訟費用中、証人井本伊三郎、同上西倉司に支給した分については、刑事訴訟法第一八一条第一項本文を適用してこれを右被告人に負担させることとする。

四、被告人乾多市、同下浦景雄、同井戸正昭の判示第四の各所為、被告人野林実義、同佐茂光義の判示第五の各所為及び被告人向井一郎の判示第六の所為はいずれも公職選挙法第二二一条第一項第四号に該当するので、右被告人らの右各罪につきいずれも所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で右被告人らをそれぞれ懲役三月に処し、情状により刑法第二五条第一項を適用して、右被告人らに対しいずれもこの裁判の確定した日から三年間それぞれの刑の執行を猶予することとする。

(被告人らの主張に対する判断)

一、判示第一の一、二の1、2、第二の一、二、第三の一の1、二、第四ないし第六の各事実における金員授受の趣旨

被告人らは、右各事実において授受された金員はいずれも選挙運動の実費として預けたり、預つたりしたものであると主張するので、これらの点につき判断する。

前記各事実につき掲記した各証拠を総合すると、(1)被告人久保は、室木広治から受け取つた一五万円のうち九万円を地区責任者の被告人高橋、同東野、同乾、同下浦、同井戸、同野林、同佐茂及び長沢源蔵、舛見義一の九名に一万円ずつ、残額六万円を後記二のとおり石伏好子を介して被告人東野に渡し、さらに被告人東野はいわゆる裏金責任者に決定後右一万円を後任の地区責任者となつた被告人向井に渡したものであるから、被告人久保が選挙運動の実費として支出した分は皆無であること、(2)地区責任者である右被告人らのした支出中には、(ⅰ)選挙運動とは何ら関係のない純然たる個人的出損と目されるもの、例えば、被告人乾が能勢町議会議長暮部方の葬儀に個人名で供えたジユース二箱の代金一、二〇〇円ないし一六〇〇円位、舛見義一が歌垣地区南郷の中村方の葬儀に個人名で供えた供花料二、〇〇〇円、被告人高橋、同佐茂が自己の所持金と混同のうえ支出したというコーヒー代、煙草代、散髪代等や、(ⅱ)違法な選挙運動に要した費用、例えば、被告人向井が昭和四二年四月一六日ころ当選のお礼に箕面、奥能勢を廻つた際の食事代七五〇円、被告人下浦が当選祝賀会の肴代として支払つた二、五〇〇円等もあり、(3)また、被告人野林、同高橋、同向井のように期間中の選挙運動に関して全く支出していない者もあり、残金の処理についても精算した者もあり、しなかつた者もある等さまざまであることが認められる。

このように、地区責任者である被告人らに渡された金員の使途、残金の処理等が人によつてさまざまであるのは、前記金員の授受に対しその点の指示がなされず、受領者の裁量に一任されていたものと推認するのが相当である。

したがつて、前記各金員は、選挙費用に当てるだけでなく、受領者の利得に帰すべき用途に当てることも容認する趣旨で、費用及び報酬として供与されたものと認めるのが相当である。

二、判示第一の二の3、第三の一の2の事実につき被告人久保の関与の有無と金員授受の趣旨

被告人久保、同東野は、右の事実につき被告人久保は無関係であると主張し、また、被告人東野は、石伏好子から受け取つた六万円は選挙運動の実費として預つたものであると弁解するので、これらの点につき検討する。

右事実につき掲記の各証拠を総合すると、被告人久保は、判示第一の一のとおり室木広治から受け取つた現金一五万円のうち九万円を各地区責任者に渡した後、残額六万円の処置に困り、石伏候補のためのいわゆる裏金責任者が決定されるまで同候補の妻石伏好子に預けておこうと思い立ち、昭和四二年三月二四日ころ、同候補方で同女に対し右六万円をしばらく預つてほしいと言つて渡したが、その二、三日後に同女から右六万円を返すと言われたので、当時すでに被告人東野がいわゆる裏金責任者に決定していたので同被告人に渡してもらいたいと答えたこと、そうして、同月二九日ころ、同被告人に対し、裏金責任者としては表に出せない選挙のための金がいるだろうし、また、裏金責任者としていろいろ苦労をするだろうと考え、六万円を石伏好子に預けてあるから受け取つてもらいたいと申し出たので、被告人東野は、同日ころ、右候補者方で同女から右六万円を受領し、同年四月初めころ被告人久保に対し右金受領の礼を述べていることが認められる。

右認定事実によれば、被告人久保は、被告人東野に対し石伏候補のために選挙運動をすることを依頼し、その費用及び報酬として石伏好子を介して六万円を供与し、被告人東野は、右のことを知りながら右六万円の供与を受けたものと認めるのが相当である。

三、判示第三の一の3の事実における金員授受の趣旨

被告人東野は、右事実において授受された二〇万円につき、当初は選挙運動の実費として預つたものであると主張していたが、その後において右金員は石伏候補の東能勢村農業協同組合(以下、農協と略称する。)からの借入金の内入金として農協組合長である室木広治に届ける趣旨で同被告人に委託されたのを、これを誤解して選挙運動の実費として費消したものであると弁解するので、この点につき検討する。

第四回公判調書中証人井本伊三郎の供述部分、第二七回公判調書中証人石伏義雄の供述部分及び石伏義雄の検察官に対する昭和四二年六月二三日付供述調書謄本によると、石伏候補は、本件選挙に関し同年三月二二日ころ農協から無担保で選挙資金として借り入れた一五〇万円を含め、右二〇万円の授受当時少なくとも二〇〇万円以上の債務を農協に対し負担していたことが認められるところ、石伏候補が農協からの各種借入金のうちどの分の弁済をしようとしたものであるか明確ではなく、しかも告示直後にいわゆる裏金責任者であつた被告人東野を通じて個人的な借金の返済をしようとするのは極めて不自然で、前記二〇万円が農協に対する借入金の返済のために委託されたものであるとの被告人東野の弁解は採用できない。

そうして、同事実につき掲記した各証拠を総合すると、前記二〇万円は、室木広治その他の多数の選挙運動者に対する選挙運動をすることの報酬及び費用に当てさせる目的で石伏候補から被告人東野に交付されたものと認めることができる。

四、判示第三の一の4の事実における金員授受の趣旨

被告人東野は、右事実において授受された二〇万円は石伏候補に対する選挙運動資金の献金として預つたものであると主張するので、この点につき検討する。

同事実につき掲記された各証拠によると、右二〇万円のうち一〇万円は室木広治名義の陣中見舞として、他の一〇万円は農協名義の陣中見舞として室木から被告人に渡されたものであるが、室木は、その趣旨につき同被告人が石伏候補のため本部会計(いわゆる裏金責任者)として投票取〓め等の選挙運動をしてくれていることに対するお礼と、同被告人のもとにおけるいろいろな支出に当ててくれればよいということで渡したもので、普通の単純な陣中見舞ではないと供述し(同人の検察官に対する昭和四二年六月一八日付供述調書)、被告人東野も検察官に対し同趣旨の供述をしていること(同被告人の検察官に対する同年六月二〇日付供述調書)、農協名義の陣中見舞については支出に際し正規の手続が履践された形跡が見当らず、また、これらの金員はいずれも法定の届出がなされずに違法な選挙運動の費用に当てられたことが認められる。

したがつて、右二〇万円授受の趣旨は、陣中見舞という名目にもかかわらず、被告人東野に対し石伏候補のため投票取〓め等の選挙運動を依頼し、その報酬及び費用として供与されたもので、同被告人もそのことを知りながら右二〇万円の供与を受けたものと解するのが相当である。

五、判示第三の一の5の事実における金員授受の趣旨

被告人東野は、右事実において授受された一五万円は選挙運動の実費として預つたものであると主張するので、この点につき判断する。

右事実につき掲記の各証拠によると、右一五万円は、石伏候補が昭和四二年三月一六日ころ室木広治に対し自己のため投票取〓め等の選挙運動を依頼してその報酬及び費用として供与した三〇万円のうちの一部で、残額一五万円は判示第一の一のとおり室木から被告人久保に手交されたものであること、室木は、井本伊三郎を介して被告人東野に渡した一五万円の趣旨については一貫して検察官に対し、いわゆる裏金責任者としての被告人東野に対し気張つて選挙運動をやつてくれるそのお礼と多くの選挙人に酒食を提供するなどの支出に当ててくれという意味を兼ねて渡したものであると供述しており(同人の検察官に対する昭和四二年六月三日付、同月四日付、同月一二日付各供述調書)、同被告人も検察官に対し同趣旨の供述をしている(同被告人の検察官に対する同年六月一日付供述調書)ことが認められる。

したがつて、井本伊三郎を介して室木から被告人東野に渡された前記一五万円は、室木が同被告人に対し石伏候補のために投票取〓め等の選挙運動をすることを依頼してその報酬及び費用として供与したもので、同被告人もこのことを知つて右金員を受け取つたものと解するのが相当である。

六、判示第三の一の6の事実における金員授受の趣旨

被告人東野は、右事実において授受された三五万円は選挙運動に要した実費の支払に当てるために預つたものであると主張するので、この点につき判断する。

右の事実につき掲記した各証拠によると、被告人東野は、石伏候補から受領した三五万円を、(1)選挙運動期間中に債務の発生していた選挙運動費用(同被告人が選挙期間中に債務発生行為に関与したもの((例えば、古谷みつ子、上田重光方からのガソリン券の購入や正弁丹吾寿司に対する巻寿司の発注等))や、その他の選挙運動者が同被告人と意思を通じあるいは通じないで債務を発生させていたもの((例えば、「別口室木」として未払になつていた準備期間中の食事代等や連絡所における飲食物提供代金等の未払等))がある。)及び(2)同被告人の不知の間に債務の発生していた各地区における当選祝賀会の関係費用の各支払に当てたことが認められる。

右(1)の中には連絡所における飲食物の提供のようにそれ自体が違法な選挙運動であつて、被告人東野に求償権を有しないものもあり、同被告人がその未払代金を支払つてやることは、本来の債務者の債務を不法に免脱させる意味で報酬の事後供与と解されるものもあり、また、その他の支払のためにした支出は、同被告人が出納責任者の文書による承諾を得ていない点においてすべて違法となり(公職選挙法第二四六条第四号、第一八七条第一項)、本来石伏候補に対し求償できない出費に当たるものといわねばならない(法の禁止する違法な選挙運動は、何人もこれを行なうことができないのであつて、このような犯罪行為に要した費用は本来他の何人に対しても、求償できないものであり、違法な選挙運動のためたとえ実費を支出しても、これにつき第三者から相当額の補償を受けることは、本来受けることのできないはずの不法な財産上の利益を供与されたことになるものと解すべきである。)。

つぎに、右(2)の費用はそれ自体が違法であるばかりでなく、被告人東野の関知しない間に債務発生行為がなされたものであるから、同被告人がその代払いをしても、同被告人から石伏候補に対し求償権を生ずるいわれがない。

したがつて、右(1)、(2)のいずれの支出についても、被告人東野としてはこれらを石伏候補に対し求償することができなかつたのであるから、前記三五万円の授受を選挙費用の受け渡しと認めることができず、その授受の時期や情況を考慮すると、被告人東野が石伏候補のため選挙運動をしたことの報酬とする目的で授受されたものと認めるのが相当である。

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